審美性と機能性に最大限配慮した
高坂デンタルオフィスの歯科治療例を紹介します。
患者さんは30代男性で、前歯の見た目が気になるということで来院されました。古い詰め物の変色は二次カリエス(再発した虫歯)になっているので治療は必要ですが、ご本人にとっての問題は詰め物が劣化したということだけではありません。
相手に対して最も強い印象を与えるお顔の中心となる2本の前歯です。以前から隙間が空いていることを気にされていたそうです。過去、他院で審美性の改善を希望したところセラミックスを被せることを提案されましたが、その時は断念したとのことでした。その理由は…
見た目を回復したいからといって、どれだけの量なら無傷のエナメル質を削り去ることは許されるのでしょうか?そもそも費用の問題をクリアーできなければ、自分が希望する治療だったとしても受けることはできません。
今回は費用をかけないで済む保険治療を選んでいただき、その範囲の中でできるだけ綺麗に仕上げるために、治療時間を少し長めに頂戴しました。とはいえCR修復は、1回のアポイントで済む治療です。その日のうちに治療は終わります。古い詰め物とむし歯を削ります。むし歯の範囲は狭かったものの、見た目の改善(形の改善)も図るとなると削る範囲は多少広がります。それでもCR修復は詰め物治療なので、セラミックスクラウン修復よりは遥かに歯のダメージが少ないことはいうまでもありません。歯とお財布に優しい治療です。
色々な薬液で歯の表面を処理して、ペースト状の材料を少しずつ乗せてゆくのですが、その際、材料がはみ出ないように透明の短冊を巻き付けます。歯と歯の間に少しでもはみ出ると、見た目ではわからなかったとしても、フロスは引っかかり汚れは決して取り去ることはできません。バクテリアの温床となり、むし歯の再発や歯ぐきの炎症のきっかけになるのです。
クラウンを被せる時は、材料や治療法に制限があるため保険診療と自費診療には精度的に大きな違いが生まれます(自費と保険の違いパート2参照)。
保険診療のCR修復も、全ての材料の使用が許されてはいないので、将来的には自費診療との差が目に見えてくるかもしれません。
しかしどんな材料を使おうと、やり方はすべて歯科医師次第です。できるだけいい状態にするための歯科医師の意気込みに、保険治療と自費診療に違いはありません。確実な治療のため保険診療でも時間も多少は長くかかるかもしれませんが、仕上がりを重視してのことなのでご理解ください。
1本ずつ、丁寧に形を揃えて研磨して終了です。天然のエナメル質のような自然観を表現するために、表面には溝や凹凸をデザインします。先端に欠けたような跡を残すには理由があります。
治療前、向かって右側の先端に段差があります(黄丸)。これは歯軋りによって下の前歯と擦れ合た結果の跡です。仮にここをCRで形を復元しても、歯軋りによって一晩ともたないかもしれません。患者さんには理由を説明して、あえて形はそのままにしました。
少し補足すると仮にCRのようなプラスティック素材ではなく、セラミックスやジルコニアなどの硬い素材で形を復元したとします。するとそれまでの歯軋りのパターンが変わり、思いがけない場所に予想以上の被害が及ぶかもしれません。
歯軋りによって擦れた面の形を修正するときは、噛み合わせ全体を考えてより慎重にならないとなりません。
歯科医師 高坂 昌太