噛み合わせは日々変化するため、歯科治療直後の修復物に問題がなくても、将来的に変化に耐えられるがどうかは分かりません。
未来の問題を予想し回避する治療、定期検診の大切さを実際の症例を見ながら説明いたします。
いま被せた「被せ物」は、いまの噛み合わせにはマッチしていたとしても、噛み合わせは日々変化します。その変化に修復物はとり残されてはいないか?定期検診でのチェックが必要な理由です。
今だけが美しくて満足する方はいないはずです。仮に「審美歯科」という治療だとしても、のちの問題を予想、回避するためのアイデアは欠かせないと考えます。
上顎前歯4本のむし歯(カリエス)、患者さんご本人は見た目を気にされていました。
過去にレジンによる治療しかされていないようにも思えますが、右上1番に関しては神経がないため、他の歯よりも暗く変色しています。
切端がのこぎり状にギザギザになり、歯軋りによって強く擦れ合っていることを示しています。噛み合わせによるセラミック破損のリスクが高いため、治療後も噛み合わせの継続観察が必要と思われます。
象牙質の変色の程度によって、削る量が決まります。右上1番は薄いラミネートベニアでは色の改善は難しいと診断、削る量は多くなるがクラウンを選択しました。
隣の左上1番は小さなむし歯と形の改善のみのため、表面に薄いセラミックスを貼り付ける薄いラミネートベニア治療が可能で最小限の切削としました。
形と色が改善することによって、患者さんは大いに満足してくださいました。
左右2番の治療に移りました。右上の2番は過去の詰め物がつぎはぎ状に広範囲に及んでいたため、被せ物によって修復物を一体化させて形を改善した方が有利であると診断、左上2番はセラミックスを貼り付けるラミネートベニアを選択します。
どんな時でも、歯ぐきから血を流すような削り方をしてはなりません。血を出さない削り方をするか、出血しにくい器具を使って削ることが大切です。
患者さんは左右の犬歯も綺麗にしたいとご希望されましたが、噛み合わせ的にはセラミックがすぐに壊れてしまいそうな危険があります。「左上の犬歯」に注目すると、先端の摩耗が顕著です。先端の細い部分に力が集中しており、被せたセラミックスが短命に終わる可能性があります。
そうなった場合、前歯の噛み合わせのバランスが一気に崩れ、修復したばかりの4本のセラミックスにも被害が及びうるこことまで考えると、患者さんの要望とはいえすぐには手をつけられません。
治療しても問題ないのか、噛み合わせの変化を観察しながら、様子を見ていきます。