審美性と機能性に最大限配慮した
高坂デンタルオフィスの歯科治療例を紹介します。
患者さんは70代女性、上顎中切歯が食事中に突然折れたとのことで急遽来院されました(術前)。
歯冠の前面は8割方破損しており、長さもほぼ半分になっています。これだけのダメージの修復には、通常でしたら型採りをしてクラウンを被せる治療が妥当でしょう。
しかしそのためには神経をとって土台を建てなければなりません。神経をとった歯は寿命が極端に短くなります。この状態なのでいつかは神経をとることになりそうですが、今は痛みもありません。神経を保存することを第一目的に、コンポジットレジンで修復することにいたしました。
それにしてもこのダメージです。できる限り美しくしく、できる限り長持ちさせるためには材料を選ばなくてはなりません。どうしても時間と費用はかかります。自由診療でなければ対処できないケースです。
上顎中切歯が食事中に突然折れたとのことで急遽来院されました(写真1)。
真ん中の歯が欠けてしまっては人前に出ることもできません。そのままお帰りいただくわけにはいきませんので、初診当日は応急処置で形だけ整えて終わりになりました(写真2)。
コンポジットレジン充填、治療直後の記録です(写真3)。むし歯ではなかったので削る量は比較的少なかったですが、破損状況は深刻です。
色と形を美しく表現し、かつ通常の咀嚼にも耐えられるように仕上げなければなりません。治療の難易度は高いです。
隣の中切歯はセラミックス修復がされていますが、とにかく色調をバランスよく揃えることに大変苦労いたしました。
治療の実際は紫外線のライトを照射してペースト状のコンポジットレジンを固めますが、修復範囲が広いと何層も材料を盛り重ねないとなりません。
今回は紫外線ライトの照射回数はカウントできないほどでした。口を開けっぱなしの患者さんも相当辛かったはずですが、最終的には十分にお喜びいただきました。
見た目のバランスを良くするためには2本の歯の切れ込みを左右対称に仕上げることがポイント(黄色いライン)であると他の症例でもお見せしました。そして正面から見た時のバランスの良し悪しは歯の厚みも大きく影響します。
写真4は先端方向からのみた記録です。この方向から見ても左右の切れ込みの形が対象になっていないと、正面から見た時の形バランスが不思議と崩れて見えるのです。治療の仕上げの段階では、正面から、上から、下から、斜め横から、横から、様々な角度から見て確認して形を整えていきます。
現在のコンポジットレジン修復は大量の手間や特別な材料を必要としなくても(テクニックは必要ですが)美しく仕上げやすくなり、図1のような保険診療の1色盛りだけでも満足してくださる方が多くなりました。材料の進歩の恩恵です。
しかし保険診療には限界がございます。患者さんの要求は同じでも、むし歯の深さ、欠けてしまった範囲の大きさ、噛み合わせの問題など状態は千差万別です。図2のような歯の構造に配慮しながら必要な手間をかけないと、美しい結果を期待できない場合も多いです。
歯科医師 高坂 昌太