低位咬合とは噛み合わせが低いにも関わらず、なぜか歯と歯が噛み合っている状態をいいます。それは、関節がズレるからこそ生まれる異常な噛み合わせなのです。
お口の中を観察しても全ての歯は噛んでいるので、低位咬合は見落とされがちです。噛み合わせの不調を感じた場合には、顎関節も含めた丁寧な検査が必要です。
噛み合わせが低いも高いも、お口の中を見ただけでは相対的な判断しかできません。つまりその歯が低すぎるのか?、他の歯が高すぎるのか?絶対的な評価は不可能なのです。もしも顎関節(顆頭)の位置に異常がなければ話は簡単です。上下の歯がピッタリ噛むように修復物を調整すればいいだけですし、場合によっては他の歯を多少は削ることが許される場合もあります。
しかし顆頭の位置がズレていた場合、その対処法は急に複雑になります。ズレた顆頭を正しい位置に戻してから噛み合わせを整えなければならないからです。
日常全く不満を感じていない方の噛み合わせを観察しても、教科書に書かれているような理想的な接触の方はほとんどいません。一方で、咬合紙のマークではバランスよく接触しているように見えても、噛み合わせに深いお悩みを抱えている方もいらっしゃいます。
次の写真は綺麗に噛んでるのに顎関節に違和感を感じていた方の治療前と治療後の写真です。
咬合紙のマークを見る限り、臼歯はバッチリ噛んでます。でも低位咬合のせいで顎関節に深い悩みを感じられていました。
治療前も、治療後も上下の歯がしっかり噛んでいることは咬合紙のマークから分かります。ではこの咬合治療で患者さんの何が変わったのでしょうか。
治療後で決定的に違うのは「顆頭の位置」なのです。
ただ噛ませればいいというわけではなく、顆頭の位置の改善してからでないとならないケースもあります。
健全な噛み合わせには何が最も優先されるのでしょうか?
それは顆頭位です。
顆頭の位置が正しくズレがなければ、歯の接触に多少のばらつきがあっても違和感を許容しやすいのでしょう。こんなものかと無意識に受け入れて、何の不満も感じずに日常を過ごします。もちろん治療の必要はありません。
事実、天然歯列の多くは理想的な噛み合わせでないことがほとんどです。かたや顆頭の位置異常やズレがある場合、それを残したまま削る咬合調整をいくら繰り返しても状況は決して良くならないのです。
ただし、お口の中だけを見ても顆頭位の問題までは把握できないのが事実です。そのために特別な検査が必要となります。