取り外し式の義歯には利点と欠点がありますが、今なお有効な治療方法のひとつです。
患者さんが義歯を使いこなし、最大限の使い心地を得られるよう、患者さんの心にも寄り添いながら義歯治療に取り組みます。
取り外し式の義歯には利点と欠点があります。最終的にそれをお選びになる方には、利点を最大限活かして、欠点を最小にする工夫をしながらその方だけの義歯をご提供いたします。初めての義歯をお使いになる時は、老いを余計に感じてしまうかもしれません。しかし義歯は義手や義足と同じ人工の臓器の一つです。
慣れるためにはトレーニングのように日々使い続けなければならないし、使いこなすまでには時間もかかるでしょう。少しでもモノを噛むという機能を維持していただくために、少しでも気持ちの衰えを防いでいただくために、患者さんの心に寄り添うつもりで義歯治療にも取り組みます。
30年近くも前、私が歯科大生だった頃に大学の講義で入れ歯の欠点を教わりました。
総入れ歯の場合は、天然の歯よりも咀嚼の効率が15~20%にまで落ち込みます。硬いものは一切食べられないかもしれないという機能的な欠点があることは学生でも予想の範囲内ですが、精神的にも影響を与えるということを授業で初めて聴きました。患者さんは、義歯を装着することによって「老いを感じて気持ちが萎える」とおっしゃいます。
野生の動物は歯を失うことはそのまま死を意味します。人間の場合、義歯とは老化の象徴なのでしょう。しかし歯が欠損した部位を放置することが、他の歯の寿命を加速度的に短くします。
「義歯の治療は、患者さんの心の落ち込みにも寄り添いながらなされるべきである」、という内容の講義を受けたことを今でも覚えています。
欠損歯が少なければセメントで固定するブリッジクラウンで修復が可能ですが、失った歯が多い場合は、以前は入れ歯治療が当たり前でした。
もちろん、今ではインプラントも選択肢の一つとなりました。
歯科医療は進歩し、患者さん本人の衛生観念も高まり続けた結果、入れ歯治療を求める患者さんは年々減少傾向にあります。しかしインプラント治療も万能ではありません。患者さんがどんなに望んだとしても、顎の骨の状況によっては取り外し式の入れ歯をお勧めしなければならない時もあります。インプラントは費用もかかります。たとえ使い心地が天然歯に一番近かったとしても、手術そのものに不安があったり、年齢的に拒絶する方もいらっしゃいます。
義歯を安定させるための工夫もさまざまありますが、残念ながら保険診療で認められているテクニックはごくわずかです。通常のむし歯治療でさえ自費診療との間に大きな差が生じているのが現在の歯科保険システムです。
しかも自費扱いの治療を保険診療で行うことは法律で原則禁止されています。ですが自費であっても保険であっても、同じ医療であることに変わりありません。当医院では、自費診療で得られる「感覚」をできる限り保険診療にもフィードバックいたします。