歯ぎしりについて

たまに患者さんから「歯軋りを止める方法はないのですか?」と問われます。歯軋りを抑える方法はあるのでしょうか?

歯ぎしり ストレス緩和の観点から

歯ぎしりを止めることは難しい

たまに患者さんから「歯軋りを止める方法はないのですか?」と問われます。歯軋りを抑える方法はあるのでしょうか?

歯ぎしりを多少和らげることはできるかもしれませんが、効果的な手段はありません。歯ぎしりを行うにはそれなりの理由があるのですが、そこを初めに考えてみましょう。

歯ぎしりはストレスから体を守る生理的運動

人は日中、肉体的、精神的なストレスを溜め込みながら生活を送ります。ストレスが高まると色々なホルモンが分泌されます。例えば、副腎という器官からコルチゾールが、副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、無意識のうちに体には様々な生理的な変化が訪れます。結果的に、血圧や心拍数、血糖値の上昇。血液は粘度を増し、初期の免疫細胞が増えます。体温は上昇し、口は乾き、瞳孔は狭くなり、体の機能全体が興奮モードに入るのです。

少し休むだけで消え去ってくれるストレス反応もありますが、もしも仮にそれが長期間続いたとすると、精神的なダメージが病となって現れます。不眠症やうつ病、記憶障害です。しかしそれだけではなく、不妊症、生活習慣病などのストレス関連疾患が発病しやすくなるのです。

それらストレスに起因する病を防ぐためには、ストレスによって興奮状態となった全身を鎮めなければなりません。そのための行動の一つが歯ぎしりなのです。歯ぎしりによってβエンドルフィンという鎮痛作用のあるホルモンや、ドーパミンなど自律神経を落ち着かせてストレス反応を和らげるホルモンが分泌されるのです。ちなみにリズミカルな咬合運動、普通の食事やガムを噛むことは、セロトニンという精神安定ホルモンの分泌を促します。噛むという行為は、興奮状態にある体の状況を鎮める効果があるのです。

つまり歯ぎしりとは、ストレスから精神を守りつつ、体を健康に保つために行う生理的な運動なのです。従って歯ぎしりを止めるということは、精神や体に問題が生じやすくすることにもつながるかもしれません。

歯ぎしりの原因は他にもあります

現在、歯ぎしりの原因はストレスだけではないとされています。

就寝時、無意識下における脳と他の組織が連携した結果の生理現象です。

歯ぎしりを行う原因の全てはまだ解明されておりません。

歯ぎしりで歯にかかる力

骨格が変形するほどの力がかかっている?

通常の食事で発揮される咬合力は、大体その方の体重と同じくらいといわれています。ところが歯ぎしりしている時の力のかかり具合は、意識的に発揮できる力とは比べ物になりません。その時の咬合力の数値は研究者によってもまちまちで、どれが一番現実に近いのか臨床家の私には判断できません。しかしある研究データによると、瞬間的に500kgの力が計測されたこともあるようです。もちろん歯ぎしりする方全員のデータではありませんが、少なくとも、歯ぎしりをしている時は顔面の骨が変形していると考えるべきなのです。

確認が難しい「歯ぎしり」

つまり、歯医者さんで噛み合わせの調整をした時は問題がなかったとしても、骨格を変形させながらの歯ぎしりでは、歯や歯肉や顎関節や筋肉にダメージを与える接触が登場しても不思議はないのです。

歯ぎしりの噛み合わせは、普通のチェックだけでは確かめることはできません。確かめられたとしても、全ての歯ぎしりを再現することはできないでしょう。確認ができないということは、問題の予防が困難であるということなのです。

歯ぎしりによる予想外の接触が
歯・歯肉・顎関節を壊さないように

だからといって、運を天に任せるばかりでは患者さんも不安になるだけです。できる限り歯や顎関節、体を守るために活用できる素材もあります。それが「ゴールド合金」です。

ゴールド合金であれば、予想のできない当たりがあっても、予想はできるもののそれを回避しにくい場合でも、力を受け流して、その方の噛み合わせの特徴に合わせて形を変えてくれるのです。

かみ合わせの特徴に合わせて変化する
ゴールド合金(金歯)

次の治療例のように、ゴールド合金がすり減って変形したから治療が失敗というわけではなく、変形してくれたからこそ守られたものがたくさんあるということなのです。

クラウンセット時

クラウンをセットした時点

こちらは上の奥歯にゴールドクラウンを被せた時の写真です。当然クラウンをセットする時は、患者さんに違和感のないように調整を済ませています。

6ヶ月後

6ヶ月後

半年経つと数カ所に擦れ合って変形した跡が出現しました。セットした時は過剰に当たる場所はありませんでした。歯ぎしりがこの変形の一番の原因だと考えられます。

6年後

6年後

さらに6年後。噛み合わせの2/3以上の面積が擦り減り、元の形とはほど遠く変形してしまいました。

セラミックス治療では?

仮に、その歯をセラミックスで治療していたら考えられることは、セラミックスの破損です。セラミックス治療が高価だったとしても、それは長持ちしなかったでしょう。セラミックスが壊れなかったとしても、噛み合っている側の天然エナメル質が過剰にすり減ることになります。壊れないセラミックスとして売り出されているジルコニアなら、なおさら噛み合っているエナメル質のダメージは大きくなります。

天然の歯を守るための治療であるはずなのに、逆に天然歯にダメージを与えてしまうとしたら本末転倒です。ゴールドクラウンの方がセラミックスよりも遥かに問題は起きにくいのです。

だからといって患者さんの要求をはなから退けることはいたしません。できるだけ自然で美しい治療を希望されるお気持ちもよくわかります。リスクはご説明させていただきますが、それをご理解していただいた上で、色々と工夫を凝らしてできる限り問題の起きにくいセラミックスを装着いたします。

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